第76回ベルリン国際映画祭 レッドカーペット&ワールドプレミア上映
第76回ベルリン国際映画祭に正式出品され、レッドカーペット&ワールドプレミア上映が行われました。

第76回ベルリン国際映画祭のジェネレーション部門にノミネートされている本作。ベルリン国際映画祭は、カンヌ、ヴェネツィアと並ぶ世界三大映画祭のひとつに数えられ、今年で第76回を迎える世界的にも権威ある映画祭だ。その中でも1978年に創設されたジェネレーション部門は、「Generation 14plus」と「Generation Kplus」の2つのコンペティションから成り、子どもやティーンエイジャーの世界を描く作品に特化した部門として高い評価を受けている。これまでにも、日本からはSTUDIO4℃が手がけた『鉄コン筋クリート』や、岩井俊二監督の『花とアリス』、近年では『マイスモールランド』など、世界中の映画人から注目を集めた作品が出品されてきた。本作は「Generation Kplus」にて正式出品され、最高賞であるクリスタル・ベア賞(最優秀作品賞)の獲得を競う。
そんなベルリン国際映画祭に、本作の製作総指揮・原作・脚本を務める西野亮廣と、監督の廣田裕介、プロデューサーの田中栄子(STUDIO4℃)らが参加し、レッドカーペットに揃って登場。小雪が舞うなか、黒のタキシードを身にまとい、劇中に登場するネコのキャラクター・モフのぬいぐるみとともに姿を現した西野は、華やかな雰囲気の中で堂々とレッドカーペットを闊歩。沿道からの声援に笑顔で手を振り、ファンからのサインや写真撮影にも応じるなど、終始和やかなムードで会場を沸かせた。

日本公開に先駆けて行われたワールドプレミア上映では、親子連れや友人同士で訪れた子どもたちの姿も多く見られ、客席はほぼ満席に。開演前から期待に胸を膨らませた観客で賑わっていた場内は、上映が始まると一転、スクリーンに集中する静かな熱気に包まれた。物語の重要なシーンでは思わず歓声が上がる場面もあり、エンドロールではエンディングソングに合わせて手拍子をする子どもたちの姿も。上映終了直後には自然と大きな拍手が沸き起こり、観客から惜しみない称賛が送られた。

その後の舞台挨拶(Q&A)には西野と廣田監督が登壇。冒頭、西野は日本から持参した絵本を質問してくれた観客にプレゼントするというサプライズを発表し、会場を沸かせた。子どもから大人まで次々と手が挙がり、活発な質疑応答が繰り広げられた。

まずはじめに「子供のころから絵を描いていたのですか?」という質問に対し、西野は「僕が絵を描き始めたのは25歳の時です。ただ、子供の時も欲しいものがあったら描いたりはしてました」と回答。さらに「どの順番で物語ができるのか?」と問われると、「音楽を先に作って、その曲に合うようにストーリーを作ってます」と制作工程を明かした。物語冒頭でルビッチが大切にしていた思い出のブレスレットをネズミに持っていかれるシーンについて「ルビッチのブレスレットはどこに行っちゃったんですか?」との質問が飛ぶと、廣田監督は「ブレスレットは実は大切な友達が持っていると思います」と、観客の想像をふくらませる答えを披露。また、本作でルビッチの新たな相棒となる異世界ネコ・モフについて「アグレッシブなキャラクターなのはどうしてですか?」と聞かれると、西野は声優を担当したMEGUMIの名前を挙げ、「モフの声をしている、MEGUMIちゃんという日本の子がいるんですけど、その子がああいう性格で、声をしている人の性格をそのまま投影しています」とキャラクター造形の裏側を語った。

中盤では制作期間についても触れられ、映画完成までに約4年半、原作絵本の制作期間を含めると約10年の歳月をかけたこと、さらに約200~300人ものスタッフが関わっていることが明かされた。
加えて作品のテーマについて、西野は「僕はコンビで活動してるんですけど、22、3歳のときにある日突然、相方が仕事のプレッシャーでいなくなってしまったんです。僕のキャリアのスタートはコメディアンなんですけど、日本の若手で多分1番売れていた芸人だったんですが、その活動が突然止まってしまって」と実体験を告白。「会社から、(相方が)戻って来そうにないから一人で活動するか?と提案をされたんですけど、ここで僕がもし一人で活動して、仮にうまくいってしまうと、彼が戻ってくる場所がなくなってしまうなと思って、待つことを決めたんです」と、本作の着想の原点となったエピソードを語った。そして「待つということはすごく勇気のいる判断だなと思います。例えば、今日もお子さんがたくさんいらっしゃいますけれども、お父さんお母さんは子供がすることに時には口を挟みたくなる。それをぐっと待ってあげるっていうのはすごく勇気のいる行動だと思いますし、そういった方々のエールになればいいなと思って書きました。子どものことを信じてあげてほしいし、大切な人がまだ成果が出ていなかったら、それも信じて待ってあげてほしいなと思います」とメッセージを送った。

終盤には、主人公・ルビッチの名前の由来がドイツ出身の映画監督エルンスト・ルビッチに由来していることや、監督自身が最も自信を持つシーンについての質問も。最後に廣田監督は「より良い未来のためにアニメーションを作っているので、この映画を通して、たくさんの方たちが未来に希望を持って、進んでいけると嬉しいです」と呼びかけ、終始温かな空気に包まれたQ&Aは幕を閉じた。
Q&A後には会場ロビーでサインセッションも実施。鑑賞直後の興奮冷めやらぬ観客が詰めかけ、瞬く間に人だかりができるほどの盛況ぶりとなった。西野と廣田監督は一人ひとりと丁寧に向き合い、握手やサインで感謝を伝え続けた。
会場で鑑賞した現地の観客からも、「観終わったあとにすごく心が温かくなって気持ちがいいです!」といった声や、「とにかく結末が良かった。笑顔をもらいました」との感想が寄せられたほか、「原作の本も是非読んでみたい!」と作品世界の広がりに期待を寄せる声も上がるなど、称賛の声が相次いだ。さらに、海外の映画関係者は「こんなに子供たちの質問が多くて盛り上がったQ&Aは初めてだ」とコメント。長年映画祭に足を運んでいるという現地の映画ファンも「10年三大映画祭に通っているが、今回の上映が一番心に残る、素晴らしい上映会だった」と語るなど、熱量の高い反応が続いた。世界的にも権威あるベルリン国際映画祭の場で確かな手応えを感じさせた本作。世代や国境を越えて物語が届いていることを実感するワールドプレミアとなった。