初日舞台挨拶 イベントレポート
『映画 えんとつ町のプペル 〜約束の時計台〜』が3月27日に公開初日を迎え、製作総指揮・原作・脚本の西野亮廣をはじめ、永瀬ゆずな、MEGUMI、小芝風花、吉原光夫、カジサック(キングコング 梶原雄太)らスタッフ・キャスト一同がTOHOシネマズ 日比谷に集結しました。

西野亮廣は開口一番「初日舞台挨拶ということで、出演者がみんな黒や茶系でお洋服を揃えているところ、一人だけ目立とうとするカジサック、お前の回じゃない!と、本当に気分が悪いです(笑)」と隣にたつ赤いジャージのカジサックに苦言を呈すと、キャストも会場も大爆笑。「でしゃばってこのカッコしてるわけじゃない!」と慌てて否定するカジサックと流石の息のあったボケツッコミを繰り広げ、会場のボルテージをどんどん上げていく。そんなカジサックは、自身が演じた“ヒモサック”の裏声をその場で披露し、会場を沸かせた。

本作は2月に行われたベルリン国際映画祭でワールドプレミアを迎えた後、試写会でも「泣いた!」「大切な人に会いたくなった」など感動のコメントが数々寄せられている。その大きなポイントの一つが、オーディションでルビッチ役に選ばれた永瀬ゆずなの“泣き”のシーン。永瀬は「ルビッチが(小芝演じる)ナギさんにお話をしにいくシーンでは私も台本を読んだりアフレコをしていて泣いちゃっていて。自分でもルビッチみたいに悲しくて、ルビッチがアフレコしているみたいで。すごく楽しかったんですけど悲しかったです」と役と自身が深くシンクロしていたと語る。大人の声優ではなく、子どもを声優に起用した理由について西野は、ニューヨークでの「えんとつ町のプペル」のミュージカルを実施する際の、投資家向けプレゼン公演がきっかけだったと振り返る。「それまでは大人の方にルビッチを演じてもらっていましたが、その時のルビッチ役が12歳くらいの男の子だったんです。その時、みんながルビッチのことを応援していたんです。背もたれから体がだんだん前のめりになって“頑張れ!頑張れ!”って。きっと子どもの不安定さとかそういうのも相まってだと思うんですけど、子どもがその時代にしか持ってない求心力・魔法みたいなものってあるよなと思っていたところ、プロデューサーたちからも“オーディションしませんか、子どもで”と声が上がりまして、一か八かやってみるかと」と経緯を明かす。「ゆずなちゃんの声を聞いた瞬間に“ルビッチいた!”という感じでした。“ルビッチの声ってこういう声じゃなかろうか”と想像していた声がそのまま出てきてると思うんですよね」と、“すごい出会い”と感嘆。

また廣田裕介監督は、自身から見た西野のクリエイティブ面のこだわりについて「特徴的なのは台詞回しのところ。特にライブ感を大切にされているなと思ってて。キャラクター同士のやり取りの部分で、作られたセリフではなくて、その場で即興的に生まれた言葉の選び方をすごく大切にされているなと。それは演技でやるのもすごく大変なところだと思うんですけど、実際のアフレコ現場でも、セリフを台本から変えさせてもらったりもしましたし、芝居の付け方への西野さんからの提案もありました。この作品のストーリーはもちろん、台詞回しのところにも西野さんらしさが出てるんじゃないかなと思います」と分析。アフレコ現場を回想し、西野は「アフレコの現場で、アドリブというか、その場で作る。決められた台本ではなくて、なんならそこで作ったセリフに合わせて絵を変えることもありました。本当は口が動いていたシーンだった・・・例えば(吉原)光夫さんが演じたガスと(小芝演じる)ナギが出会うシーンで、もうちょっとセリフがあったけれど“ない方がいいね”となったシーンがあって」と語る。そのシーンのセリフはカットになったそうだ。
また、本作はアニメーションならではの幻想的な映像美も魅力の一つ。廣田監督は、「やっぱり千年砦ですね。前作のえんとつ町という舞台と違って、いろんな場所が出てきます。別々の魅力が一つ一つあるという世界にしたいという思いがあった。あとキャラクターを全部CGで作ってるんですね。そのキャラクターを動かす仕組みが前作から一新しまして、より魅力的なキャラクターを描けるようになったんですね。よりいきいきとしたキャラクターの表情や動きを表現することができています」とテクニカルな部分も明かしてくれた。

こうしたライブ感を重視したアドリブの応酬となる場面で本領発揮したのがモフ役のMEGUMI。「ツッコミみたいなところは声を当ててみないとわからない。カメラを引いて口が映ってないアクションシーンはMEGUMIちゃんに丸投げで」と西野が明かすとMEGUMIは「ヒドイもんでしたよ。でも先生がおっしゃるから・・・」とボヤき、会場の笑いを誘う。カジサックも「あのシーン大好き!天才ですからね!あれアドリブですよ、すごくない!?」と太鼓判。“パタパタ”飛行船で森の中に入っていくシーンは完全にアドリブだそうだ。ルビッチも螺旋状に上がっていくシーンでは永瀬もアドリブに挑戦。「盛り上がっちゃって、マイクから完全に背を向けて自分も螺旋状に動いちゃった」と可愛らしい失敗エピソードを明かしていた。
また、お笑いコンビ・キングコングと同期としてデビュー、現在は映画のプロデュースにも活躍の場を広げているMEGUMIは「好きな監督・尊敬する監督たちは“作品は個人的であればあるほどいい”ということを常に教えてくださるので、キングコングの二人とはデビュー当時からのお付き合いで、同じクラスメイトみたいな感覚がある。二人の本当の物語を見ていたから、それがこういう形になったんだと。西野くんのアイデンティティと生き方が、梶原さんとの話が詰まっているのは、そばで見ていた身としてはめちゃくちゃエモーショナルで、そういう意味で泣けましたし、こんなにたくさんの方に見ていただけて、この一連がエモすぎて、今日は特別な日だと思ってます」と感慨を語った。

初めて脚本を読んだ時の感想を聞かれたガス役の吉原光夫は「映画の前に舞台とかでずっと一緒だったので、皆さんよりだいぶ前に第1稿は読んでるんです。全く違う内容で、僕はすごい好きだったので“これでいくんだ!”と興奮してたら、次連絡来た時には“全部ボツにしました”と・・・そこで今回の新しい脚本が生まれて。でも実は僕は前の方が好きだったんです。前に戻したほうがいいんじゃないかなと思っていたけど、声を当ててみて、完成を見て、“これしかねえな”となりました」と語ると、西野も「よかったー!」と安堵の声を上げていた。

ナギ役・小芝風花も脚本を読んだ時の感想を問われると「泣きました。観客の皆さんの感想にもあった通り、点と点がつながっていくところとか、後半ルビッチがガスに詰め寄って、モフに怒られるところからずっと泣いてた!忘れて前に進む強さもあるし、待ち続ける強さもあるし、二つとも間違ってないけどルビッチの心情が痛いくらい刺さって、映像を見た時どうなっちゃうんだろうと思うくらい、台本の段階からすごく感動してました」と振り返る。

最新作の物語の背景には、キングコングの実体験が背景にある。21歳ごろ、デビューが早く、エリートともてはやされたものの、本人たちはどの現場でもあまり結果が出せない日々。プレッシャーから心身のバランスを崩した梶原が失踪し、岐路に立たされた西野。一人で仕事をこなすのではなく、“待つ”と決めた日―――特にラストシーンは梶原との実際のやりとりが入っているとのこと。西野は「3日くらい見つからなかったもんね、あなた」と聞くとカジサックは「だし、その3日間の記憶、今もない」と、相当な危機だったと振り返る。
西野は「梶原さんは会話もできる状態じゃなくて。吉本興業からは“キングコング無期限の活動休止”という発表があったんですね。そこから2,3ヶ月くらいですかね。会社から“梶原があの調子だから、西野、お前一人で行くか?”という提案をされたんです。一瞬その道も考えたんですけど、やっぱり漫才している時間が楽しかったし、二人でおしゃべりしている時間が楽しくて。それが全部なくなっちゃうのはやだなぁと思った。僕がここで一人で行って、万が一うまく行っちゃうといよいよ梶原さんが帰ってくる場所がなくなっちゃうということで、“待ちます”という返事を返したんです。それが自分の人生を振り返ってみても、一番勇気を振り絞った瞬間かなと持って。この映画は脚本を書き直すとなった時に、個人的な話を書こうと思ったんです。まさにここがコアな部分で、外すわけにはいかなかった」と振り返る。
そんな西野の想いが詰まった作品を見た梶原は「何回泣いたかわからないくらい泣いちゃいまして。まず一発目に泣いてしまったのは“なんで俺の声こんなに加工されてんねん!”と・・・」とボケるとMEGUMIから「気の毒ねぇ・・・」と相槌を打たれ思わず爆笑。「モフに言われたみたい!」と、同期3人の仲の良さを見せた。「照れちゃいますけど、最後のシーンとか声出るくらい泣いてしまった。当時、かれこれ20年以上前の話ですけども、あの頃の景色・・・西野が待っている、その景色は僕しか見てない。それを思い出させてくれたというか。決してそれが僕にとっていい思い出だったのかどうかはちょっと病んでたんでわからないけど、今自分がカジサックとして頑張れているのもあの一瞬があったおかげだったりとか、いろんな思いが襲ってきてめちゃくちゃ泣きました」と心情を打ち明けた。西野は「ナギがガスのところに行く階段を上がっていくシーン、それはそのまんま。梶原さんが僕の部屋に来た時のまま。“間に合うかな”“大丈夫、間に合う”というセリフも、謝りにいくシーンも」と打ち明けた。

さらにこの日は、現在撮影のためカナダにいるプペル役・窪田正孝からビデオメッセージが到着!「今回再びプペルを演じることができて、新しいキャラクターの皆様に会えて、見ていてとても勇気をもらえた。2020年に前作を収録していた当時の風景を色々と思い出しました。」と語る窪田。そして窪田の「もう一度・・・」は<もう一度会いたい>。「最近亡くなってしまった大切な猫にもう一度会いたいな・・・って思います。すごく今寂しいんですけれども・・・長い闘病生活を戦って、そこから解放されてきっと天国でいっぱい食べて遊んで寝て、日向ぼっこしたりしているんじゃないかな・・・ということを想像すると、ちょっぴり元気をもらえたり、安心する気持ちになれたりします。どこか本作のテーマに通じる部分があるんじゃないかなって思っています」と、愛猫を思い出すかのような優しげながら切なげな表情で語ってくれた。最後に窪田は日本の観客へ「いろんな勇気をもらえるし、たくさんの幸せや感動を与えてくれる作品になっていると思うので、心ゆくまで楽しんでもらえたら嬉しいです」とメッセージを送った。
窪田のメッセージを受けた西野は「前作の時はコロナ禍だったので、完成した後も打ち上げすらできなくて、廣田監督やスタッフの皆さんと“終わったね”と乾杯もできなかった。エアーで“お疲れ様でした”とやって終わりだったんです。コロナ禍では窪田さんともありがとうございましたと労う時間も設けることができず、時間が経ってからようやく窪田さんとお食事ご一緒させていただいて。“実は続編作ってます、その時はよろしくお願いします”という夜があったんですけど、ようやくここに着地することができてありがたいなと思っています。そして、彼がプペルというキャラクターを作ってくれたのは間違いない。すっとんきょうな声で出てくるじゃないですか。真っ白でピュアで、だけど情けなくて愛くるしくてというプペルのキャラクターは彼が作ってくれたので、本当に感謝しています」と深い感謝を述べた。
最後に永瀬は「今作のルビッチも前作に引き続きすごく応援したくなる。最初はプペルが戻ってくることを諦めそうになっても、結局最後まで走り抜けるかっこいい子になるように頑張ったので、皆さんもルビッチを応援してくれたら嬉しいなと思います」
廣田監督は「公開初日に見にきていただいたことが本当に嬉しいです。音も映像もキャストの皆さんのお芝居も本当に素晴らしくて、エンターテイメントのアニメーション映画としてどなたでも楽しんでいただける映画になっています。作り手としては、映像も音響も映画館で見るのに最適になるように、色とか明るさ、絵の細かさ、たくさんのスピーカーから出る音を調整して、“映画館で見るために”作っています。映画館に足を運んでいただいて、映画館で“体感”していただきたいと思っています」と語った。

そして最後に西野は「待つということがテーマになっています。僕はチムニータウンという会社をやっているんですけども、スタッフは僕よりも20コくらい下の若手もいる会社なんです。1年目、2年目のスタッフは、鈍臭い子は鈍臭いんです。それに対して口を挟みたくなることもあるんです。コケる前に。でもそれを言ってしまうと自分で考えることをやめてしまうから、それをグッと我慢するんですよ。多分子育てもそうですかね。お父さん、お母さんもそういう挑戦をされているんじゃないかなと思います。子どもに対して口を挟みたくなることはあるけれど、そこはグッと堪えて、子どもがちょっと失敗することも立ち会ってあげないと、子どもの成長はない。やっぱり教育とか子育ての過程で“待つ”というのは非常に重要な挑戦なんだなと思います。劇中でもルビッチが言ってましたが、”待つ“ということは何もしないということじゃなくて、相手のことを信じ抜くということなんだと。実際僕が2,3ヶ月梶原さんを待っている時は、“梶原さんのことを信じ抜くぞ”という気持ちでいました。そういったメッセージが伝わればと思います。今待っている方、待たせてしまっている方、あるいは相手のことを信じ抜くことが難しくなりかけている方、信じ抜きたいなと思っている方に届けば嬉しいです」と語り舞台挨拶を締め括った。